第13章 ノルウェー・ドラゴンのノーバート
ガチャン----静かな魔法薬学の教室で、やたら大きく響く音で一斉にみんなの視線がそこに集まった。その音はちょうど今自分が材料を取りに歩いたところで、ミラは床にぶちまけられた試験管の破片と液体が目に入った。
そこから視線を上に上げていくと、ニンマリと意地の悪い顔をしたドラコと目が合った。
「先生ー、グローヴァーがわざとぼく達の試験管を落としました!」
ドラコの隣で一緒に作業をしていたパンジーがクスクスと笑っていた。
「---マルフォイ、」
「ミス・グローヴァー」
ミラは咄嗟に拳を強く握り締め、一歩前に進んだ時、スネイプ先生がサッとドラコ達のテーブル前にやってきた。
「君達の魔法薬の出来が良くないからと言って、他の組の妨害をするとは嘆かわしい。グリフィンドール、10点減点だ」
ハリーとロンは今にも飛び出しそうになる体を、お互いに服を掴み合って必死に押さえつけていた。ミラは静かにスネイプ先生を睨みあげると、スネイプ先生の真っ黒の瞳がミラを冷ややかに見ていた。
「わたしが---」
ミラは静かに、そして今にでもスネイプ先生を殴りつけてやりたいという衝動を抑えながら口を開いた。
「わたしがやった証拠を出してください、先生」
「素直に認めないと?」
「この試験管は、わたしが通り過ぎてから落ちました。わたしが今いる位置と、試験管が落ちた場所には少し距離がありすぎると思います」
「魔法を使ったのよ!」
パンジーのキーキー声が教室に響いた。
「魔法なら可能だわ!」
「---スネイプ先生は以前、この授業には杖を振り回す馬鹿げたことはほとんどないと仰ってましたよね----わたしの杖はきちんとカバンの中に閉まってあります」
得意げな顔っだったパンジーは、途端に顔を青くさせて口を閉ざした。
「あと、聡明なスネイプ先生なら私たちの魔法薬が、彼らのと比べるほどでも無いことは、仰らなくてもわかるかと思いますが」
「---さっさと材料を取って、席につきたまえ、ミス・グローヴァー。我輩の気が変わらないうちに」
「そうさせてもらいます」
ふふん、とドラコとパンジーに一見して、上着を翻してミラは材料を取りに向かった。