第12章 ニコラス・フラメル
クルリと振り返ると、ネビルとクラッブの取っ組み合いも中々だった。お互い鼻血まみれだったが、ネビルは果敢にもクラッブに向かって行った。
あの泣き虫でビビってばかりのネビルの面影はなかった。もちろん喧嘩慣れしていないネビルに武が悪く、鳩尾にパンチが入ってネビルは両膝を地面に詰めて、鳩尾を抑え込んだ。
クラッブがさらにネビルを殴りつけようとした瞬間、ミラはクラッブに杖を向けた。
「ロコモルト・モルティス!」
呪文がクラッブに当たると、クラッブの足は両足ピッタリとくっついた。バランスと取ろうと腕をブンブン振っていたが、少しでも突けば転けてしまいそうな様子にミラはうっすらと笑った。
「ネビル、今だ!」
ネビルはミラの声が聞こえて、鳩尾を抑えながらも立ち上がってクラッブの肩にパンチを食らわした。呆気なくバランスを崩したクラッブも悲鳴を上げたが、やはり気にする者はいない。
ミラはネビルに駆け寄って様子を見ると、酷く殴られていたが、どこかちょっぴり誇らしげに見えた。
ニッとミラは笑ってみせると、ネビルを席に座るように即足した。
ロンとドラコはどうなったのだろうと探していると、こちらも酷い有様だった。ロンは酷く鼻から出血していたし、ドラコは左目に青あざができていた。
「ロン、手を貸そうか?」
「いいや!こいつはぼくがやる!」
「そう言うと思った」
「---クラッブとゴイルは、どうした?」
ドラコはキョロキョロと二人の姿を探した。
「ああ、二人なら…そこらへんに転がってるよ。芋虫みたいで面白いことになってる」
ミラは杖をドラコに見せびらかすと、眉間に皺を寄せてミラを睨み付けた。
「ごめんね?わたし、育ちが悪いの」
なんの悪びれもなくミラは言った。ドラコは悔しそうな顔を見せると、大衆の中に逃げ隠れてしまった。
「あいつ、逃げ足だけは早いな---それよりミラ、本当にクラッブとゴイルを?」
「びっくりするくらいトロい奴らさ、あなたがあいつらをトロールって呼ぶのもわかるよ…いや、あのトロールより酷いかもしれない」
ロンはニヤッと笑うと、ミラも笑ってみせた。
「それより、ハリーだ!」
ロンは思い出したように声を上げた、その時---。