第12章 ニコラス・フラメル
「運がいいぞ、ウィーズリー。ポッターはきっと地面にお金が落ちてるのを見つけたんだ!」
マルフォイがそう言うと、ロンはついに切れてしまった。
マルフォイが身構えた時には、もうロンがマルフォイに馬乗りになっていて、地面に組み伏せていた。
ネビルは一瞬怯んだが、観客席の椅子の背を跨いで加勢に加わった。ミラはまさかネビルが加勢に行くとは思っていなかったが、ロンとドラコが椅子の下で転がり回っていたのが見えた。
ロンを捕まえようとするクラッブとゴイルに、ネビルが突っ込んでいき、ミラは広角を上げて喧嘩に加わった。
早速ネビルを羽交締めにしているクラッブと、それを殴りつけるゴイルの左肩をグイッと引っ張った。
「二体一って卑怯だと思わない?」
ミラは強く握り込んだ右手の拳を思いっきりゴイルの鼻にぶつけた。ヨロヨロと地面に片足をつけたゴイルは顔に手を当てて唸った。それを見ていたクラッブとネビルは驚いたようにミラを見ていたが、ミラはゴイルなど気に留めず、クラッブの足を思いっきりふん付けた。
「ぎゃあ!」と声を上げたクラッブの拘束が解けたネビルは自由になった。
「ネビル、そっちは任せた!」
「う、うん!」
ミラはすぐにゴイルに視線を向けると、血が垂れた鼻を押さえてミラを睨み付けた。ゴイルのパンチはミラには遅く、当たる前にミラは軽く避けてみせた。
隙だらけの脇腹に数回同じところを殴ってみせると、ゴイルの動きはどんどん鈍くなってきた。
「トロールより酷いな」
ミラは杖を抜き取ると、ゴイルに向けた。
「這いつくばってるのがお似合いだ、『ブラキアビンド』」
呪文を唱えると、ゴイルの腕はぴっしりと体の横にくっついてしまい、そのままバランスを崩して地面に倒れ込んでしまった。腕が動かせなくなったゴイルは悲鳴を上げていた。
「行けっ、ハリー!」
と、ハーマイオニーが椅子の上に跳び上がり、声を張り上げた。ハーマイオニーの後ろで喧嘩が起こっても、ハーマイオニーはまるっきり気に掛けないほど、ハリーに集中していた。それは周りの観客も同じだった。