第12章 ニコラス・フラメル
「---その賢者の石で、スネイプ先生は何がしたいんだろう?」
ミラは開いた片方の手を口に当てて考え込んだ。
「お金が欲しそうにも見えないけど、フラメルみたいに長生きしたそうにも見えない」
「そう見えて、案外欲張りなのかもしれないわ。魔法薬に使うのかしら?」
「…魔法薬に使う鍋を全部黄金に変える、とか?」
「そんなことに賢者の石を使って欲しくないわね…」
クスクスと、ミラとハーマイオニーは笑った。膝の上でおとなしく撫でられているノクチュアは首を傾げてミラを見上げた。
・・・・・
次のクィディッチのしあうが近づくにつれ、ハリーは不安を感じていることに、ミラ、ロン、ハーマイオニーは気が付いていた。ハリーがクィディッチの練習に行くときは、三人はハリーに黙って『足縛りの呪文』を練習していた。
もしスネイプ先生がハリーを傷付ける素振りを見せたら、すぐに呪いをかけられるように準備をした。
「二人が足縛りの呪文をかけるなら、わたしは先生の髪の毛を三つ編みにする呪文をかけるのはどう?」
「君はどうやったらそんなくだらない呪文を見つけてくるんだい?」
ハーマイオニーの次に呪文をマスターしたミラは、まだ完璧に呪文を使えないロンがイライラしながら口を開いた。
「まだ髪の毛を燃やされるよりマシさ。ハーマイオニーなんか、スネイプ先生を丸焼きにしそうになった」
「丸焼きになんかしてないわ!」
ロンに呪文を教えていたハーマイオニーが顔を赤らめて抗議した。ミラは軽く杖を振って「インセンディオ」と小さく唱えると、杖の先から小さな炎が灯った。
「ほら見て、だいぶコントロールできるようになった。杖先に止めるのって、中々難しいんだよね」
ゆらゆら揺れる小さな炎を、ミラは目を細めてうっとりと見つめていた。ほんのりと顔の周りが暖かくなり、冷えた杖の持っていないもう片方の手を近づけて暖をとった。
ロンはブツブツ文句を言いながら練習の再開した。
「ちょっとできるからって自慢かよ」
「あなただってできるようになるわ、ロン」
ハーマイオニーは根気良くロンに付き合った。ミラはハーマイオニーから勧められた呪文集を手に取り、何か他に面白そうな呪文はないか探し始めたのだった。