第11章 みぞの鏡
次の日の朝、ミラは談話室の肘掛け椅子に座って、暖炉の炎をじっと見つめていた。思い出すのは昨日の夜、偶然にもあの鏡の前に立ってしまい、鏡に写ったものについてだ。
ロンが引っ張ってくれなければ、きっとあそこでじっと立ち尽くしてしまっていたかもしれない。鏡に映ったのは----美しい女と、その隣には背の高い男が写っていた。
二人は仲むつましく、そして自分を見下ろす目が優しく、どちらも微笑んでいた。すぐにロンに腕を引っ張られたため、しっかりと二人の姿を見ることはできなかったが、女性はとても美しい髪をしていた。絹のようなシルバーブロンドで、着ている服もどこか上品を感じさせるような黒のワンピース、胸元にある銀色のロケット。
男性はダークな髪をしていて、女性とは逆に白いシャツにジーンズを履いていて、シンプルな格好をしていた。隣にいる女性とミラを見比べると、嬉しそうに微笑んでいた。
パチンと弾ける暖炉の火に、ミラの意識はハッと戻った。
あれはきっと両親だと、ミラは直感でわかった。特に女性の瞳は自分と同じアメジストの色をしていたからだ----見なければよかった、ミラは後悔した。
ハリーにはハリーの両親や家族、ロンにはロンが首席でクィディッチのキャプテンになったものを映していた。もっと思い出さないと、とミラは鏡を思い浮かべた。
鏡の枠の上の方には文字が彫られているのが特徴的だった。
『私はあなたの顔かたちではなく、あなたの心の望みを写す』
ミラは眉間に皺を寄せると、昨夜写った男女は自分の両親だったと嫌々でも気付いた。
「のぞみ、か…」
もう何年も前に捨て去った気持ちが湧き上がり、ミラは忌々しく暖炉の炎を睨みつけた。そして大きく息を吐いて、目を閉じた。
---まさか自分の望みが、自分を捨てた両親に会いたいだったと知り、早くこんな気持ちがなくなってしまえばいいと願った。