第11章 みぞの鏡
しばらくすると、ハリーとロンが談話室にやってきた。ロンがハリーにチェスをしないかと持ちかけるも、ハリーは断った。ハグリッドのところへ行かないかと誘っても、ハリーは首を横に振るだけだった。
「あの鏡のことについて考えてるんだろ、ハリー。もう行かない方がいいよ」
「わたしもそう思う」
「どうして?」
ロンとミラは心配そうにハリーを見たが、ハリーは意味が分からないという顔をしていた。
「わかんないけど、なんだかあの鏡のこと、悪い予感がするんだ----それに、君はずいぶん危ない目に遭ったじゃないか。フィルチもスネイプも、それにミセス・ノリスもウロウロしているよ。連中にきみが見えないからって、安心は出来ないだろ」
「ハーマイオニーみたいなこと言うね」
「ハリー、ロンの言う通りだよ」
「本当に心配しているんだよ。ハリー、行っちゃ駄目だよ」
しかし、ハリーは鏡の前に立つことしか考えていないようだった。いくらロンとミラが何と言おうと、ハリーの意思は変わることがなかった。流石のミラも「勝手にしたらいい」と、呆れて一人で図書館に行ってしまうと、ロンは大きなため息をついた。
・・・・・
次の日の朝、ミラは大広間で一人朝食を取っていると、向かいの席にハリーとロンが座った。
「ミラ、昨日はごめん」
ハリーは開口一番にミラに謝った。
「ダンブルドア校長に昨日、あの鏡はもう捜しちゃいけないって言われた。君たちの言う通りだった。心配かけてごめん…」
「…本当にもう探さない?」
「約束する」
真剣な顔のハリーを見たミラは、やっと無表情だった顔を解き、笑ってハリーを見た。傍で見ていたロンもホッとした表情をすると、テーブルに置かれた朝食に手を伸ばした。
「ところでミラ、君は何が写ったの?」
ベーコンの最後の一切れを食べようとしてたミラに、ハリーは思い出したように尋ねた。
「…さぁね」
「暗くてよく見えなかった」と、ミラはベーコンをパクりと食べてしまった。デザートのベリーに手を伸ばしているミラに、ハリーは昨夜のダンブルドア校長とミラが被ったような気がして、自分も朝食を始めることにした。