第11章 みぞの鏡
そしてその夜、三人は透明マントを被って鏡のある部屋を探して談話室を抜け出した。廊下は凍えるほど寒く、ミラはもう一枚靴下を厚着すればよかったと後悔した。
薄暗い廊下を1時間近く歩くと、ロンが「もう帰ろう」と諦めていた。ミラも正直このままその鏡が見つからなければいいのにと思っていて、すっかり冷えてしまった体をギュッと抱きしめた。
「ここだ---ここだった---そう!」
ハリーは歓喜の声を上げた。三人で扉を開けて中に入ると、ハリーはマントをかなぐり捨てて鏡のある所へ走っていってしまった。ハリーは嬉しそうに鏡を見ているが、後ろから見てもハリーの家族が映っている様子は見えなかった。ミラとロンはお互いの引き攣った顔を見合わせたが、ハリーにゆっくり近づいて確認しようとした。
「ほらねっ?」
「何も見えないよ」
「ハリーしか見えないよ」
「ちゃんと見て、ほら、ぼくの所に立ってみて」
ハリーが脇に退いてロンが鏡の正面に立つと、ペーズリー模様のパジャマを着て鏡に写っているロンの姿が見えた。今度はロンのほうが、鏡に写った自分の姿を夢中で覗き込んでいました。
「ぼくを見て!」
と、ロンが興奮したように言った。
「家族皆んなが、きみを囲んでいるのが見えるのかい?」
「ううん、違う----ぼく一人だ----でも、ぼくじゃないみたい----もっと年上に見える----ぼく、首席だ!」
「なんだって?」
「ぼく---ビルが付けていたようなバッジを付けてる---そして最優秀寮杯とクィディッチ優勝カップを持っている---ぼく、『クィディッチ』のキャプテンもやってるんだ!」
ロンは、惚れぼれするような自分の姿からようやく目を離し、興奮した様子でハリーとミラを見た。
「この鏡は、未来を見せてくれるのかな?」
ミラは誓ってもロンが主席になれるような生徒ではないと、口には出さなかったが、今口にすればロンの機嫌が悪くなるのが目に見えて黙り込んだ。