第10章 クィディッチの初試合とゴールデンスニッチ
いよいよハリーのクィディッチ初試合を明日に迎えた金曜日、スリザリンとの合同魔法薬学はハリーにとって最悪だった。相変わらずハリーを目の敵にしているスネイプ先生の嫌味は輪を掛けて酷く、ミラは呆れた様子でスネイプ先生を見た。
「あなたの先生って本当にいい性格してるよ」
声は控えめに、しかし隣の相手に聞こえるようにミラは言った。
「それは褒め言葉か、グローヴァー?」
隣でスマした顔で作業をこなしているのは、スリザリンのドラコだ。いい君だ、とドラコはふんと鼻を鳴らしてハリーを見た。
「明日が楽しみだよ、あいつが負けるところをしっかり見てやる」
「それはないさ、ハリーなら絶対勝つ」
眉間に皺を寄せたドラコはミラを一瞬見たが、たまたま近くを通ったスネイプ先生を見かけてすぐに顔をテーブルに戻した。
「これ、縦に刻むんだっけ?」
「それはさっき先生が言ってただろう、横だ」
「そうだった」
ミラは縦に刻みそうになった干からびた人参のような物をの向きを変え、横にリズム良く刻んだ。
「---ハロウィンの時、先生にわたしが女子トイレにいること、ドラコが教えてくれたって…ありがとう」
「はい、刻んだよ」とミラは刻んだものをドラコに渡した。一瞬何を言われたか理解できなかったドラコは、刻まれたものを受け取った時に大きく目を見開いてこっちを見ていた。
ミラはすぐに顔を元の位置に戻して、黙々と作業に戻った。
「トロールには会ったのか?」
「うん、最高に臭かったよ。ドラコだったら臭すぎて気絶してたかも」
ドラコはどこか恐る恐ると言ったような聞き方をした。するとミラは、作業の手を止め、ドラコを見てニヤッと笑って言った。
「一言余計だぞ、グローヴァー!」
「ハハッ、冗談だって!後で来たクィレル先生、気絶したトロールを見ただけで座り込んでたよ」
ミラはハロウィーンの夜のことを思い出し、クスクス笑った。
「仮にも闇の魔術を防衛する先生が聞いて呆れるな」
「フリットウィック先生といい勝負してると思うけど、あのニンニク臭さで寝られないのが難点だ」
「お前…」
呆れた目でドラコに見られたが、ドラコの口角がほんの少し上がったのをミラは見逃さなかった。