第9章 ハロウィーン
トロールは、フラフラしたかと思うと、ドサッと音を立ててその場にうつ伏せに伸びてしまった。 倒れた衝撃が部屋全体を振動させた。
ハリーは立ち上がると身体が震え、息も絶えだえだった。ミラは慌てて駆け寄り、ハリーを力一杯抱きしめた。
「ハリー!なんて馬鹿なことするんだ!大馬鹿者だ!!」
「き、君だって危なかったじゃないか!
ハリーもミラを力強く抱きしめると、お互い生きていることを思い出したように安心した。
ロンは、まだ杖を振り上げたまま突っ立って、自分のやったことを呆然と見ていた。奥に座り込んでいたハーマイオニーがやっと三人に近付いて口を開いた。
「これ----死んだの?」
「いや、死んでないと思う…ノックアウトされただけだと思う」
ハリーは屈み込んで、トロールの鼻から自分の杖を引っ張り出すと、灰色の糊の塊りのような物がベットリとくっ付いていた。
「うぇー、トロールの鼻くそだ」
ハリーは、それをトロールのズボンで拭き取った。
急にバタンという音がして、足音が聴こえたので、四人はその方向を振り向いた。
どんなに大騒動だったか、四人は気付きもしなかったが、物が壊れる音や、トロールの唸り声を階下の誰かが聞きつけたに違いなかった。
まもなく、マクゴナガル先生が飛び込んで来ると、すぐにスネイプ先生が来て、その後にクィレル先生もやって来た。
クィレル先生はトロールを一目見た途端、弱々しい声を上げ、胸を押さえてトイレに座り込んでしまい、スネイプ先生はトロールを覗き込んだ。
マクゴナガル先生は、ハリーとロンを見据えました。
三人はこんなに怒った先生の顔を見たのははじめてで、ミラは凍りついたようにその場に固まった。
「いったい全体あなた達はどういうつもりなんですか」
マクゴナガル先生の声は、冷静でしたが怒りに満ちていた。
「殺されなかったのは運が良かったのです。 寮に居るべきあなた達がどうしてここに居るんですか?」
スネイプ先生は、ハリーのことを素早く鋭い視線で見ていた。
「せ、先生…」
ミラはとっさに二人の前に立ち塞がった。
「これは、あの」
「ミス・グローヴァー、あなたのことはミスター・マルフォイから伺っています。あなたがお手洗いに行って大広間に来ていないと」
「ドラコが…?」