第1章 夜景とコーヒーと貴方の香り
「お疲れ様です。」
次から次へと同僚が帰宅するのをパソコンの画面を見ながら見送る。
「はぁ、今日は本当に最悪だ。」
事の発端は定時の1時間前にかかってきた電話だった。
明日までの期限の案件に急に変更が入ったのだ。
そして今、私はほの暗いオフィスで一人パソコンを叩いている。
窓から見えるキラキラした夜景が憎らしい。
「はぁぁぁぁ。」
深い溜め息が静かな社内に響いた、その時…。
「そんな溜め息をついて、どうしたのですか?」
急に後ろから声をかけられて心臓がビクッと鳴った。
「な…七海…。」