• テキストサイズ

涼風の残響【鬼滅の刃】

第27章 そよ風と木枯らし


幾つ目の朝日だろうか。
未だに不死川邸への帰宅は叶っていない状況ではあるが、蝶屋敷で過ごす日々は穏やかで、皆の心や体の傷を少しずつ、確実に癒していく。

目を覚ました風音は窓から差し込む陽の光に目を細めた後、ゆっくりとベッドの上で体を起こした。
同室のベッドを確認すると、蜜璃、しのぶ、カナヲがまだ目を覚ましていなかったので、音を立てないようにベッドから抜け出して、一人一人の様子を確認していく。

(皆さん、あと少しで目を覚ましてくれそう。傷も随分と良くなって本当に良かった)

穏やかに眠り続ける三人の具合いの確認を終えると、風音は、そっと部屋を出て廊下を歩く。

「先を見て皆さんの目が覚める日を知りたいな。柱の皆さん全員が目を覚まさないし、こっそり……」

きょろきょろと辺りを見回し誰もいないことを確認すると、意を決したように小さく頷く。そして瞳の色を不思議な色に染めようとしたところで、後ろから誰かの手が肩に置かれた。

「風音、それはしちゃ駄目だって言われてなかったか?これ以上記憶消えちゃったらどうすんの?」

「うひゃうっ!あ……えっと、玄弥さん!」

風音が驚き振り返った先にいたのは、心配そうに眉を下げた玄弥だった。何か言い訳をしなくてはと頭の中を急速に働かせようとするが、寝起きな上に驚きからか全く何も思い浮かばず、しゅんと項垂れる。

「ごめんなさい。どうしても心配で……でも、実弥君が目を覚ました時に実弥君のことすら忘れてたら、大きな雷落ちちゃいますよね」

風音の記憶は、決戦時に思い出したものしか戻っていない。

意外にも誰よりも早く目を覚ました風音は体が動くようになると、蝶屋敷の可愛らしい看護婦たちへ、皆の手当てを自分も手伝わせて欲しいと願い出た。もちろん幾らか押し問答が繰り広げられた後に、妥協案として、無理をしないことと記憶をこれ以上失わぬよう先を決して見ないことを条件に、申し出が受け入れられた。

そんな条件を守りつつ手当てを続けていると、次々と目を覚ます剣士たちの中の一人である玄弥と話すことにより、玄弥が実弥の弟であることや、柱や剣士たちの名前、玄弥が知りうる限りの皆と風音との思い出を日々教えて貰っているのが、現状である。
/ 985ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp