• テキストサイズ

涼風の残響【鬼滅の刃】

第24章 予知と鎮魂


皆は風音の視線を追って剣士たちを瞳に映す。
この場に倒れている剣士たちは、予知により自身の死を知って尚、鬼舞辻に立ち向かい散っていった尊い仲間たち。

風音が傷だらけの体に無理を強いてでも助けたかった仲間たちだ。

愈史郎の珠世を想う気持ちや、1人でも多く助けたいと願う皆の決死の行動で当初より被害数は減ったが、それでも血に沈む者たちの数は両手では足りない。

「私の力はただ先の光景を送るだけ。ただ見て送り続けるだけしか出来ないけれど、ほんの少しでも危機を回避してもらえるかもしれないでしょう?一人でも多くの剣士の皆の力になりたい」

言葉を紡ぐ度に力の弱まった実弥の手からそっと逃れ、風音は無秩序に配置された通路を見渡してから、すぐ近くで倒れる剣士の前で跪いた。

「貴方たちの意志や願い、私たちが確かに受け継ぎました。どうか見守っていて下さい。そして全てが終わった暁には……」

もちろん返答などありはしない。

答えることの叶わぬ剣士の代わりに言葉を発したのは実弥だった。

「お前の気持ちはよく分かった。だが前にも言ったがお前にはお前の意思があるように、俺には俺の意思ってもんがあんだよ。毎回俺に引き下がってもらえるなんざ、甘い考えは捨てとけェ。全員、それぞれ意思あるって忘れんな」

「うん。忘れないよ。実弥君たちの優しさは絶対に忘れないから」

ふわりと風音の隣りに跪く気配が一つ。
そして次々と一つまた一つと気配が増え、それに伴って風音の表情が僅かに和らぐ。

皆が剣士たちの冥福を祈るよう跪き、それぞれが穏やかな表情で手を合わせたからだ。

実弥の表情も険しい声音からは想像もつかぬほどに穏やかである。

その姿にならい風音も手を合わせて、剣士たちの冥福を祈る。

(強く優しい貴方たちが、心穏やかに居られますように。全て終わった暁には……穏やかに眠れますように)

そして祈りを終えて誰からともなく立ち上がったと同時。
一瞬で空気が張りつめた。

「水柱様、蟲柱様、炎柱様ガ上弦ノ参ト戦闘開始!」

どこからとも無く現れた本部の鎹鴉の声が響いた途端、全員が風音へと勢いよく向き直った。

全員の瞳に映ったのは、元の色が分からぬほどに揺らめいた綺麗な瞳だった。
/ 985ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp