第24章 予知と鎮魂
「煉獄たちも上弦の鬼と戦い始めたって時に……とんだ問題が発生しちまったな」
「あぁ……杏寿郎たちは上弦の参との戦闘。柊木さんは能力の使用過多で記憶が……なんてことだ」
天元と槇寿郎の纏う空気は暗く沈んでいた。
ただでさえ数秒後の命すらどうなるのか分からない剣士たち。
先を見せてもらっていた状態でも多くの命が散り、一人また一人と地に沈んでいく。
だが目の前の鎹鴉からもたらされた風音の記憶に関する情報は、人物に関するもののみならず、全て……戦い方や何のために戦っているのかという目的すら記憶から消え失せるというもの。
つまり風音が予知の能力を使い続けると、最終的には歩き方だけでなく、息の仕方まで記憶から抹消される。
それは柱の戦力が一人欠けてしまうことを意味する。
「輝利哉様は止めるだろ。嬢ちゃん一人に背負わせることはしねぇ。けどなぁ……当の本人である嬢ちゃんがなぁ……煉獄たちが上弦の鬼と戦闘開始したの知ったら、先を望んじまう気がしてならねぇ」
深い溜息を零す天元につられるように、槇寿郎も深く溜息を零した。
「やめてくれ……洒落にならん話だぞ」
『風音には力を使わないよう伝えてくれ。皆の力を信じて欲しい……の言葉も添えて』
胸に痛みを覚える二人の耳に輝利哉様の言葉が聞こえてきた。
やはり輝利哉様は大切に想う子供の一人である風音の背のみに、全てを背負わせる決断は下さなかった。
それでも二人の胸の痛みが和らがないのは、天元がよく知り、槇寿郎が天元からここで聞かされた、風音の性格が起因している。
「嬢ちゃんは自分の力量がどれくらいか知ってる。客観的に見てどの柱よりも力量が劣るんだって。そんな自分の記憶より、戦力の要である柱の存在を優先しちまうだろうよ。誰がなんと言おうとな」
天元の確信めいた言葉に槇寿郎はついに言葉を失った。
誰もが誰かが欠けることを望んでいない。
出来るならば誰も欠けることなく戦を終え、幸せな人生を謳歌してほしいと望んでいる。
だがそんなに現実は甘くないと分かっているからこそ、何かを……自分の記憶を切り捨てる道を風音は選んでしまうだろう。
「新タナ情報デス!炎柱様タチ優勢!夙柱様ハ……」
新たにもたらされた情報に、固唾を飲んで二人は耳を傾けた。