第24章 予知と鎮魂
触手が再生される前にと、風音は再度肉塊を切り裂き、珠世の着物ではなく体の一部と思われる箇所を掴み取った。
「掴んだ!実弥君、珠世さんをお願い!」
不快な感覚の肉塊からズブズブと珠世の一部を引っ張り出し実弥に掲げるも、それだけを受け取ることはせず、無言で風音の体ごと抱え上げた。
そうして目まぐるしく景色が移り変わったかと思うと、その景色が止まると同時にようやく珠世の一部……頭を受け取って、いつの間にか近くに来ていた一人の剣士に手渡す。
(ここは……実弥君がいた通路……?)
実弥との短い遣り取りを終えた剣士が気遣わしげな視線を、呆然としている風音に送ると、何故か握り拳を胸の前で作って頷き、大切そうに珠世の頭を抱えて踵を返した。
その背中を見送る実弥の背を見つめ続け……今度は風音が慌てて踵を返し、鬼舞辻を包んでいる肉塊へ足を動かし……
「ひぎゃっ」
かけたところで、隊服の首元を掴まれ、前に進むことは叶わなかった。
「お前……はァ……後で覚えてやがれ。今からお前は俺の後ろから続け。先に出ることは許さねェ」
静かな怒りを撒き散らす実弥に口答えするなど思い浮かびすらせず、風音は何度も頷いて、ようやく首元を解放される。
何に対して怒られているのかしっかり自覚のある風音は、血走った実弥の瞳をおずおずと見つめ返して、言われた通り実弥が走り出したのを確認し、その背を追った。
(無自覚だったんだよ!実弥君に送ってた私の行動と違う行動をしたのは!……前科あるから信じて貰えないかもだけど)
どうやら珠世救出劇の際に取った行動は、風音の咄嗟の判断で行ったものであり、実弥たちに送っていた行動とは全く違うものだったらしい。
つまり、取り込まれる危険性の高い……命を失う可能性が大いにある行動を風音が何の前触れもなく選び取ったことに実弥は怒りを露わにしているのだ。
それが例え無意識の行動であったとしても、実弥には罷り知らぬこと。
「後でちゃんとごめんなさいしないと……とりあえず今は塵屑野郎に集中。鬼にされないように……あれ?」
(誰か私に近しい人が鬼にされた……よね?…………ちょっと待って、記憶が消えていってる?)