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涼風の残響【鬼滅の刃】

第23章 閃光と氷


「あぁ……サッちゃん!風音ちゃんと実弥君、大丈夫かなぁ?!鬼の強さはよく分からないけど、この鴉君の情報によると強いんだよね?!風音ちゃんはどうして腕を噛ませたんだい?!さっきも鬼に血を被せてたし!」

不死川邸でサチや金魚たちと留守番をしている男性。
その男性はいつの間にか部屋の中に入ってきていた、額に不思議な紙を貼り付けた本部の鎹鴉に逐一情報を伝えてもらっている。

鴉は本来人の言葉を喋らないので、

『コンバンハ、不死川様タチノ状況ヲオ伝エニ来マシタ!』

と声高々に話しかけられた時は腰を抜かしかけたが、サチが警戒する様子もないし、何より実弥の苗字を口にしたので、不思議な鴉も世の中には居るのだろう……とどうにか心の中で折り合いを付けて今に至る。

こうして心の中で折り合いを付けたものの、その鴉から齎される情報は男性の心臓を悪くするものばかりで、返事など返ってくるわけがないと分かっているのに、サチを掴んで揺さぶり問いかけるほどに動揺していた。

「ワゥ……」

フラフラと揺らされながら、サチは困ったように目尻を下げて鎹鴉を見遣る。

「柊木様ノ血ハ鬼ニトッテ猛毒デス。時ト場合ニヨルソウデスガ、鬼狩リノ際ハ、ソノ血ヲ活用シテイルト耳ニシマシタ」

サチの心情を察したのか、鎹鴉が風音の特殊な血について男性に説明した。

その説明に男性の表情と体が強ばる。

「え……そんなの……でも痛みはあるんだろう?あんな普通の女の子が、痛みがあるのに自分の体を切ってるの?俺の娘の時はそんなこと……してなかったのに」

「……血ヲ活用スルト鬼ハ、モガキ苦シミマス。娘サンノ苦シム姿ヲ見タクナカッタ、若シクハ貴方ガ側ニイラシタノナラ、貴方ニソンナ娘サンノ姿ヲ見セタクナカッタノデハナイデショウカ?」

鎹鴉も男性も、実弥でさえ風音がどういった意図でその時に血を使わなかったのか、聞いていないので分からない。
本人の中で何か取り決めがあるのかも知り得ないが、消えゆく娘に笑みを向ける風音の姿を思い出し、鎹鴉の憶測のどちらも合っているように思えた。

「そう……なんだね。どうか負けないでくれ!俺もサッちゃんたちも君たちの帰りを待っている……もう失いたくないんだ」

胸を締め付ける男性のか細い声は、静まり返った居間に悲しく響き、やがて霧散していった。
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