第23章 閃光と氷
開戦の前日。
楽しく穏やかな天元たちとの時間が終わりを迎えて数日後。
決戦前最後の柱合会議も終盤に差し掛かっていた。
しかしながら、終盤にも関わらずお開きに近付いている感じは見受けられない。
「何があっても開戦の日時や場所、どうやって、誰がその場にいるのか話すつもりはない……ということでいいのかね?柊木」
「はい……私が話さずとも、皆さんは必ず決戦の場に辿り着きます。私や実弥君を含め、どなたも遅れをとることなくです。話して皆さんの気を張り詰めさせてしまうより、いつも通り過ごしていただいている方が決戦時に絶大な力を発揮出来るはずです」
誰がどう粘ろうと風音は、開戦時の状況を話さないの一点張りで、誰も彼もの腰が重くなっているためである。
あの手この手で聞き出そうとしても全く効力を発揮しない。
それならば風音が最も信頼を置く実弥に聞けば何か情報を掴めるのでは……と問い質しても
「お前らに話せるようなこと教えて貰っちゃいねぇよ。俺の情報になんざ期待すんな」
と知っているのか知らないのか、曖昧な返答しか返ってこない。
知らないから皆に話せないのか、それとも知ってはいるが誰にも話せないような内容なので話せないだけなのか……
実弥までこの調子ならば、このまま日が暮れて日付けが変わろうと、そのまま朝を迎えようと双方が平行線を辿るのは明白である。
「ねぇ、不死川さんの屋敷に泊めてよ。もちろん担当地区の警備は行くからさ。ダメ?」
皆の弟的存在である無一郎に上目遣いで首を傾げられた実弥は、長男の血が騒ぎ危うく承諾しかけてしまった。
間一髪のところでグッと承諾の言葉を飲み込み、覗き込んできていた無一郎の頭をポンと撫でる。
「風音のこととか色々心配なのは分かるが、あんまコイツ困らせてやんな。問い詰め過ぎると、今度は罪悪感で身動き取れなくなっちまうだろ」
「……分かってるけど……先が見えちゃうからって、風音ちゃんが一人重荷を背負うことないじゃん。俺だって力になりたい。皆だってそう思ってるから、こうしてここに残ってるんだよ?」
無一郎だって他の皆だって、問い詰めれば問い詰めるほど風音が罪悪感に蝕まれることは理解している。