• テキストサイズ

涼風の残響【鬼滅の刃】

第20章 強化訓練と育手


一時間後、見事に剣士たち全員が杭に縛り付けられた。
残るは最後まで敢えて残されていた風音だけ。

どうやらかつてないほどの数の剣士たちへと先を送ることに対して、風音に負担がかかり過ぎないよう配慮してくれていたらしい。

「どうだ?剣士たちの動きを見る限り、無事に先を送れているようだが、眠気や体に新たな異常は現れていないか?」

「はい。色んな光景が頭の中に満たされているので、少し目が回っていますが……異常らしい異常は見当たりません。眠気は……大丈夫だと思います」

小芭内の瞳に映ったのは明らかに瞬きの多くなった瞳と、まるで眠気を追い払うかのように強く握りしめられた手だった。

年頃の少女といえど、剣士という特殊な職柄爪は短く切りそろえられている。
それでも握り締める力は眠気を追い払うために込められているので、これ以上続けてしまえば皮膚が破れ血が滴ることが目に見えて分かった。

「大丈夫ではないだろう……その能力の副作用は強力なものだと不死川から聞いているぞ。酷い眠気が襲ってきているならば少し休め。無理をして稽古を続行し、回復が遅れてしまえば本末転倒だ」

淡々とした口調の中にも優しさの込められた、小芭内から風音に向けられた言葉に間違いはなく、いつもならすぐに言葉を返していた風音から言葉を奪う。

しかしよく動く体と口を持つ風音がそう易々と引き下がるわけもない。

「ご心配には及びません!こんなこともあろうかと、新しいお薬を調合していたんです!実弥君のお家で傷薬を作る合間に、目がよく開くお薬を開発しました!」

そう言ってポケットから取り出したのは、いつも傷薬を入れている容器とは異なる、花の模様が描かれた小さな可愛らしい容器。

小さく可愛いらしいといえど『目がよく開くお薬』など、体に優しいものが入っているとは思えるはずもない。
それに加え柱のみならず剣士たちの間でも広がりつつある、跳ねっ返りな風音の性格を考えれば嫌な未来しか小芭内は思い浮かばなかった。

「や、やめておけ!今日中に不死川の屋敷へ帰らねばならんというわけでもないだろう!稽古は昼からでも夕刻からでも問題ない!だから……あぁ……」

時すでに遅し。
跳ねっ返りな行動を止めようとした小芭内の手は、虚しく空を切るだけに終わった。
/ 985ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp