第19章 お薬と金色
「なァ、風音。玄弥と話してきた。お前ならもっと玄弥が喜ぶような言葉掛けてやれんだろうけど……それなりに話せた。お前は本当に……煉獄が言ってたように、強制することなく俺らの問題解決しちまうんだなァ」
大好きな実弥の笑顔に加えて嬉しい言葉に風音の頬は紅潮し目がより一層きらきらと輝きを増した。
「私はそんなに大層なことしてないよ。実弥君と玄弥さんのお互いの想いが強く同じだったから、すれ違ってた縁がこうしてもう一度結ばれた。でも……本当によかった。今度玄弥さんも一緒にご飯食べようね!」
やはり色香は皆無。
それでも今は輝かんばかりの笑顔を自分に向ける風音の雰囲気が心地よく、見上げてくる頭を腕で柔らかく包み込んで胸元に押し付けた。
「お前はそう言ってるが礼くらい言わせろ。玄弥のこと、感謝してる……ありがとなァ。あと飯くらいなら行ってやっても……いい」
胸元から響いてくるくぐもった声と耳へと明瞭に響いてくる声のどちらもが、間違いなく感謝の言葉を実弥から風音へと届けた。
「私こそありがとう。実弥君の笑顔が見られてご飯も一緒に食べれて幸せです。これからも玄弥君とも私ともずっと仲良くいてね」
「風音の幸せが俺に左右されちまってんじゃねェか。……お前がいいならそれでいいけどよ。てか今更なこと言って……?!」
ポフン
と膝の裏に柔らかくもそれなりの衝撃を受け、力を抜いていた実弥の体をいとも簡単に揺らせ、風音を抱えたまま金色に輝くススキの中へと倒れ込んだ。
「ワフッ」
「満足そうにしてんなァ…… 風音、怪我してねェか?」
「フフッ、実弥君が庇ってくれたから怪我してないよ。実弥君、前は私に後ろはサッちゃんに……挟まれてあったかそう」
例の如くサチが実弥を押し倒し背中にピタリ。
「あぁ……重てェけど寒さに困ることはないだろうよ。んで話の続き……仲良くはもちろんだが接吻以上の先も頼むわ。そろそろ俺の頭ん中の螺がぶっ飛んじまう」
「螺?……私でよければ………螺をぶっ飛ばして下さい。よろしくお願いいたします」
実弥の願いを風音は拒否しない。
しかし嫌々などではなく幸せそうな笑顔である。
その笑顔に安堵の溜息を小さく零し、二人と一匹はしばらくした後家へと歩き出した。