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涼風の残響【鬼滅の刃】

第17章 芸術と嘘吐き


静まり返った刀鍛冶の里。

「夙の呼吸 玖ノ型 星の入東風!」

開戦の合図は風音の玖ノ型で木々がなぎ倒された音によって告げられた。

音を鳴らしたのは敵が来たことを里にいる剣士たちに伝えるため。

「楓ちゃん!念の為に皆さんへ鬼が来たことを伝えて!決して地面に近付きすぎないで……歪な気持ち悪い壺にも気を付けて!」

「風音サンモドウカオ気ヲ付ケテ!皆サンノ戦況ヲ集メ次第、スグニ戻リマスカラ!」

鬼の分身か血鬼術か……よく分からない大きく歪な魚と対峙している風音は楓の姿を見送ることが出来ない。

それを十分に理解している楓は頷き返してくれた姿を確認すると、それぞれの剣士の持ち場へと全力で羽を動かしていった。

「さて……この森の中には私だけ。その背中についた気持ち悪い壺、存分に破壊させてもらいます!」

どこからともなく現れた数体の巨大な魚は既に風音の周りを取り囲んでおり、ぎょろりと飛び出した目玉の全てが風音を捕らえている。

「夙の呼吸 参ノ型 凄風・白南風」

異様で不気味な魚に身震いしながらも技を放ち……複数の壺の破片を散らばらせると共に、地面にぼとりと斬り落としたのは魚には本来ついていない人間のような手足。

「どういうこと?!私の知ってる魚じゃないんだけども!これ……作った鬼の顔を直に見てみたい」

いくら直に見たいと願っても、人間の手足を生やした魚の生みの親である鬼はまだ姿を現していない。
無一郎から技を放つという合図が送られていないのがその証拠だ。

「まぁ……どんな姿か知ってるんだけどね。時透さんも……どうかご無事で!夙の呼吸……え?!ちょっと待って!……男の子?!」

先を見て知っている上弦の伍の姿を思い出し身震いしそうになった体は驚きと焦りでビクリと跳ね上がる。

目の前にいる異形の魚を倒さなくてはならない。
里の中には無一郎や訳あって炭治郎の新たな刀を懸命に打ってくれている鉄穴森や鋼鐵塚、里の者を置いて逃げるわけにはいかないとここに残ることを決めた里長である鉄地河原がいるからだ。

この異形の者たちを放って持ち場を離れれば、刀鍛冶たちや里長の命が危うくなってしまう。
そんな状況にも関わらず、無情にも風音の頭の中には森の中で異形から逃げ惑う少年の姿が映し出されてしまった。
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