第15章 豆撒きと刀
腹が減っては何とやら。
昼餉は本部が用意してくれていた握り飯を手早くいただき、腹も膨れた柱たちは現在……半数以下にまで数を減らした剣士たちに囲まれている。
木刀を向けられて。
「まァ数が減ゃあそうなるわなァ。風音、こっからは技出し惜しみなく使ってけ。後五人で条件満たせんだよなァ?」
「はい!あと五人です。今からこの綺麗な場所が荒地に……でも……分かりました。体力がもつか微妙ですけど、夜に泣くのは嫌なので全力を尽くします!」
あと五人ということは二十五人分の豆入りの袋が風音の羽織の袂に入っているということ。
誰も叩き落とした袋を保管しろなど言っていないのに、律儀にも拾い集めては昼餉の時に実弥に見せてきたので、柱たちに理由を聞かれ風音が元気に正直に答えた。
それにより生暖かい目を向けられた実弥がほんの少しご機嫌斜めになったらしい。
「柊木は不死川と共に寝ているのか。(あと五人とは言え柱が全力で技を放つので俺たちに遅れを取ることのないよう)気を付けろ」
そしてかなりの時間差で絶妙な言葉の足りなさを発揮した義勇が実弥の逆鱗に触れてくる。
「気を付けろ……とは?」
「剣士の前にテメェの首取ってやろうかァ?!あ"ぁ"?!」
何故怒鳴られたのか分からない義勇はキョトン。
何に気を付けたらいいのか分からない風音もキョトン。
この二人が顔を見合わせて首を傾げるものだから、実弥の苛立ちは頂点に達してしまった。
「お前は何も気を付けねぇでいいから前向いてろォ!冨岡、ちょっとツラ貸せや……叩きのめしてやらァア!」
突然の柱同士のいざこざに周りにいた剣士たちが肩をびくつかせ、そそくさと一箇所隙間を空ける……実弥と実弥に胸ぐらを掴まれ引き摺られる義勇が通れるように。
いつも通りのいざこざに柱のある者は溜め息を零し、ある者は苦笑い。
「実弥君!待って!えっと……えっと……実弥君!」
呼び掛けに答えてくれない実弥の名前を大声で呼ぶと、ハラハラしながら風音の脇に控え出した柱たちが目を見開くほど驚くことを変わらずの大声で口にした。
「大好き!こうして怒ってる実弥君のお顔もカッコよくて大好きだけど、私は実弥君の笑顔が一番大好き!笑って!」