第15章 豆撒きと刀
結局、実弥と共に拝んだ朝日は任務後すぐの朝日だったらしく、風音は数時間しか眠っていなかったこととなる。
朝日を存分に眺めた風音は笑顔を取り戻し、その笑顔のまま実弥と共に布団に入り更に数時間の休眠を取った翌日……
「おはよう!風音は怪我の治りがやけに早いな!もうほとんどの傷が塞がっているように見えるのだが……痛みはないのか?」
不死川邸へと帰る道を実弥と杏寿郎と共に歩いている。
「はい!どうやら鬼に付けられた傷はすぐに治るようです!歩いていても痛みもありませんし、見た目以外は健康体です!」
「見た目が問題だろ。ったく、もう少し休んで行きゃいいのに……飲んだくれてた煉獄の親父なんて何日でも待たせりゃいいんだ」
風音の怪我が完治しない間に家路を急ぐことになった理由はこれだった。
目を覚まし藤の花の家紋の家で朝餉兼昼餉を頂いていると、杏寿郎から驚きのお言葉を頂戴したのだ。
『父上が不死川と風音に詫びを……と言っていてな!何があったのか聞いても教えてはくれなんだが、ひどく思い悩んでいるようなんだ!急ぎではないのだが、時間がある時に会ってやってもらえないだろうか?』
と言われ、いきなりで悪いと思ったものの、任務がいつ入るのかも分からない身なので、急遽翌日に予定を入れさせてもらった次第である。
何分家で保管したままの酒も気になるし、詫びはともかくとして早くお返ししたいと思っていたのだ。
「そんな……何日もお待たせするなんて出来ないよ。杏寿郎さんにはたくさんお世話になってるし、その杏寿郎さんのお父さんのお酒を……私が取り上げてしまったから……こうなってしまったのではと……」
「父上から酒を?よく無事だったな!」
「無事なわけあると思うかァ?お前の親父が俺に殴りかかろうとしてコイツが前に出ちまって……頬殴られてんだぞ」
父親から頑なに隠されていた事実に杏寿郎の肩がビクつき、申し訳なさそうにいつもキリリと上がっている眉を下げてしまった。
「それはすまないことをしたな。その怪我はもう大丈夫なのだろうか?父上は元柱だ、さぞ痛かっただろう?」
優しく撫でてくれる手の心地良さに顔を綻ばせ、風音は首を左右に振った。