第12章 紋様と花
このまま続けても実弥は一向に構わなかったのだが、そろそろ風音が恥ずかしさから気絶しそうな気配を感じたので一度唇を離して頭を撫でた。
「気絶すんなよ?こんなことで気絶されちまったら、いつまで経っても先に進めやしねェからなァ」
「ん……しないよ。気絶なんてしたら実弥君の暖かさに触れられる時間減っちゃうもん。帰ってきたら……先を教えて?」
実弥にとって何とも嬉しい願いを叶えてやれるかは風音次第だが、願われたことが嬉しく額に口付けを落としてから首元に顔をうずめた。
「そうだなァ、俺としては願ってもねェことだ。無理ない程度に教えてやる」
首元で話すだけで体を震わせた風音に小さく笑い、潜入の際に着るであろう着物に隠れる位置に唇を這わせて……誰もこの少女に手を出すなと誇示するように痕をつける。
実弥の体に伝わる驚くほど熱くなった体温や漏れ出ている声は数日実弥から遠ざかる。
そう思うともう少し感じていたいと願ってしまった。
普段痕をわざわざ付けることはしていないが、今まで付けたとしても一つまでだった。
「あ……えっと、実弥君。ん……」
少し下へと唇をずらして痕をもう一つつけるとやはり風音の体は更に赤みを増し、実弥の目に映っている肌までも赤く染まり出した。
ようやく唇を離し風音の顔を見る頃には風呂で逆上せたのかと思うほどに真っ赤に染っており、瞳はとろんと下がって涙をうっすら滲ませていた。
「ハハッ、まだまだ先に進むのは早そうだなァ。無理すんな、お前の気持ちを無視してまですることじゃねェからな。無事に帰ってくれるだけで俺はいい……ほら、そろそろ準備すんぞ。宇髄はいつもこんな時に限って……」
「派手に登場するからな!悪ぃな、不死川!ちょっとばかし嬢ちゃん借りてくぞ!……おい、嬢ちゃんそんなんで走れんのか?」
全身真っ赤でふわふわと夢見心地な風音は実弥に釦をしめてもらい、支えられてようやく鞄と日輪刀を携えているから天元の疑問も当たり前だろう。
「だ、大丈夫です!実弥君を十分補充出来たので元気いっぱいなので!実弥君、行ってきます!」
出発は少しグダついたものの、風音は実弥に見送られ天元と共に元気に任務へと赴いて行った。