第7章 初任務と霞柱
結局まともな隊服は小芭内が持って来てくれていた。
飛んだり跳ねたり風に煽られることを想定して、スカートに見えるが中はズボンのようになっているキュロットが風音の標準装備となる。
胸元もしっかり首元まで閉められる仕様でほぼ裸で鬼と戦うことを回避出来たので風音としても満足なのだが……
「おい……その羽織はやめとけっつってるだろ。何でわざわざそっち選ぶんだァ?!そんなん羽織ってたらお前も俺もいい笑いもんなんだろうがァ!伊黒が持って来てくれた方にしとけよ!コロなんて丸っきり犬じゃねぇかァ!」
「伊黒さんが持って来て下さった羽織は綺麗過ぎて使えないよ!それにこっちは書かれてる文字が違うだけで、実弥さんとほぼ同じ作りなんだよ?こっちの方が……」
「柊木……不死川の言うことを……フフッ、聞いておいた方がいい。コロは流石に……締まりがないだろう?お前はいいかもしれないが、陰で不死川が笑われてしまうかもしれないぞ?」
と言う具合に風音が羽織をいたく気に入ってしまい、二人して着るのを止めさせようと奮闘しているところだ。
実弥に叱られ小芭内には笑われながら諭され、ようやく渋々と『コロ』と染め入れられた白い羽織を脱いで丁寧に畳み、小芭内が持って来てくれた赤や白の菊が描かれた羽織を羽織り直す……シュンとして。
「不満そうだなァ?!俺が見立ててやった着物と同じ柄の何が不満だァ?!コロなんて悪意とからかいしか込められてねェだろ!前田……やっぱ次会ったら締める」
「不満じゃなくて、実弥さんが見立ててくれたのと同じ柄だから汚したくなくて。作ってくれたあの藤の花の家紋の家の女主人さんにも、汚したり破いたら申し訳ないなって思うから……こんなにも綺麗なのに」
傍目から見ても菊が描かれた羽織は美しく、1度見れば遠くからでも風音がそこにいると分かるくらい鮮やかである。
……『コロ』と染め入れられている羽織の方が見る者の衝撃は大きいに違いないが。
「だからってコロはねェだろうよ……アイツらに見られたら全員の時間止まるわ。馬鹿なこと言ってねェで着替えて来い……おい、コラ。その羽織は置いてけェ。俺が預かっといてやる」