第6章 贈り物と日輪刀
柱ならば誰も風音に手を出そうなどと考えないだろう。
はっきりと全員に明言していないものの実弥と風音が好き合っていると知っているし、そもそも風音が実弥にしか眼中になく驚くほどに懐いているので手を出そうという気すら起こらない。
一般剣士の中ではそれを知らない者ばかりなので手を出そうとするかもしれないが、実弥の眼力さえあればすぐに追い払えそうである。
「そうか……お前たちがいいならば何も言わない。ところでこのクズはどうする?柊木はこのクズも……逃げたのか?」
「伊黒がこっち向いた瞬間に逃げ出した。風音には悪ィけどこれでよかったんじゃねェかァ?一緒に茶なんて互いに飲みたかねェだろ」
なんと前田はこともあろうか柱に叱られている途中で逃げ出していた。
まぁどちらか一人からお叱りを受けているだけでも涙ものなのに、それが二倍になるなど考えただけで身震いするので仕方がないのかもしれない。
今からなら二人が全力で追いかければ追い付けるだろうが、実弥の怒りは何処かにいってしまっているし、すぐに帰ってくるかもしれない風音がいるので待っててやらなければ悲しみそうなので小芭内もわざわざ追いかけようとはしなかった。
「次に同じようなことやってるの見掛けたらチビらせてやるけどなァ。それより……アイツ帰ってこねェな。何やってんだァ?」
「心配なら様子を見に行くか?攫われでもしてたらことだろう?」
攫われていたら……との言葉に一瞬体を強ばらせ実弥は何も言葉を発することもなく門へと歩を進めた。
やはりひっそりと風音を溺愛する実弥に小芭内は嬉しそうに笑みを浮かべ、こちらも何も言葉を発することなく門へと足を動かした。
それより少し前、風音は甘味処へ到着して会計をする場面で涙目になっていた。
「あ、あれ?お財布……ない。置いてきちゃったのかな?それとも落として……どうしよう!すみません!お金用意して戻ってくるので、これ、置いててもらって」
「アハハ!風音ちゃん財布忘れたのか?いいよ、不死川さんがいつも贔屓にしてくれてるから、これはその感謝の気持ちとして受け取ってくれ!」