第2章 荼毘
外の景色が暗くなる頃、荼毘は1人で暗い路地を歩いていた。無能なヒーロー共、未来のヒーローには興味がない。ただ1人の女だけを覗いては…
荼毘は、スマホで電話をかけた。何回かのコールの後に繋がった電話。
「どうしたの荼毘?何か用事?」
電話の相手は雄英に通う1年、名前は。荼毘が怪我をして動けなくなっていた時にが通りかかって手当をしたのが2人の関係の始まりだった。
数週間前
情報収集と仲間集めをしている最中に致命傷を負ってしまい、ギリギリの所でその場から離脱した。その途中、大通りから外れた路地に逃げ込み休んでいた。回復するまでその場でやり過ごそうと決めた時に、足音がした。
「(やべぇな…、さっきの連中か…それともヒーローか…どっちにしろ、今の状況で見つかるのはマズイ…)」
そして、そこに現れたのはコンビニの袋を持った未来のヒーロー候補なんて呼ばれている雄英のガキだった。ガキは俺と目が会うと恐る恐る近づいてきた。
「えっと…怪我大丈夫ですか?歩けます?」
「この状況見て、どうやったら歩けると思うんだよ…」
「そうですよね〜じゃあ、治しますね。…ちょーっと足、失礼します」そう言うと、そのガキは俺の足を触ると光を放出した。みるみるうちに傷が塞がっていく。
「おい…なんで俺を助ける…、お前、俺がヴィランって分からないのかよ?それとも、分かっててやってんのか?」俺が、そう言うとそいつは「まぁ、それはそうなんですけど…」とぶつぶつ言いながらも治療の手は止めないでいる。
そうこうしているうちに、足の怪我が治った。次に、怪我が酷い腕にも治療をし始めた。「(本当にこいつ、何考えてやがる)なんの得があって俺なんかの治療してんだよ…お前、いつかはヒーローになるんだろうが…」そう言うと、そいつは俺の方を向いて困ったように笑って言った。