第5章 遮二無二〜伏黒恵〜
「どんな女が好みだ?」
「その人に揺るぎない人間性があればそれ以上は何も求めません。」
この間の交流会で京都校の東堂に聞かれた質問に俺はそう答えた。
その時俺が思い浮かべたのは姉の津美紀、それと……
「めーぐみ!」
いつものように明るく現れた可愛い人。
「みやび……さん。」
この人、中村みやびは俺の1つ上の先輩。
「何してるの?ボーッとして。」
「いえ……別に。」
言えるわけない。
「ふーん。もし、何か悩み事があるんならいつでも言ってね。」
「わかりました。」
「おーい、みやび!」
「あっ、真希ちゃんだ。」
「みやび、憂太知らない?」
「さっき学長室に呼ばれてたよ。」
「そっか。」
その時、遠くの方からパンダ先輩と狗巻先輩がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
「何やってんだ?あいつら。」
「競争してるんじゃない?」
勢いよく走って来た2人。
パンダ先輩が勢い余って俺にぶつかった。
その反動で後ずさった俺はあろう事かみやびにぶつかってしまった。
「イタッ……」
尻餅をつき、腕を押さえるみやび。
「みやびさん!?大丈夫ですか?」
慌ててみやびを見る。
「みやび、悪い、大丈夫だったか?」
「高菜!」
「みやび、ちょっと腕見せてみろ。」
真希さんがみやびの服の袖を捲り上げた。
「ひっどいアザ。おい、パンダ!お前責任取ってぬいぐるみになれ!」
無理難題を言う真希さん。
「みやびさんすみません。硝子さんのとこ連れて行きます。俺がぶつかったんだし。」
「ありがと、惠。」
みやびの手を取り、立たせてあげた。
「私もいくわ。パンダ、棘、お前らは罰として腕立て五千な。」
真希さんが鬼の様な罰を言い渡した。