第3章 舌先三寸〜日下部篤也〜
「みやびちゃあん、ただいま!ひどいじゃんずっと電話してるのに無視して。」
「あー、気づかなかった。」
下手な嘘をつくみやび。
横で聞いてて思わず吹き出しそうになった。
「まあ、いいや。明日の誕生日いつものスイート予約したから一緒に過ごそうよ。」
「無理。」
素っ気なく答えるみやび。
「何で?」
「私、明日は日下部とデートするの。」
「は?何言ってんの?」
驚く五条。
「だから、今年の誕生日は日下部と過ごすって決めたの。」
「みやびちゃん、コイツに何かされたの?」
「キスされた。」
その言葉に俺も五条も驚いた。
「おい、お前何言ってんだよ。」
焦る俺。
「日下部、アンタ僕のみやびに何してくれてんだ!」
怒り狂う五条。
「悟、私好きな人がいるからもう付き纏わないで。スイートには他の女を連れて行きなさい。沢山いるでしょ?日下部、行くよ。」
その場に突っ立って愕然としてる五条を尻目にスタスタと歩いて行くみやび。
「お、おい、待てよ。」
その後を追いかける俺。
好きな人?
誰だろう?
「あー、スッキリした。もっと早く言えば良かった。遠慮なんてしてた私がバカだった。」
高専の門をくぐり、外へ出た所でやっとみやびが口を開いた。
「アイツ、鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔してたぞ。」
「ざまあみやがれよ。」
「しかし、知らなかったよ。」
「何が?」
「お前に好きなヤツがいたなんてな。」
すると、突然歩みを止めたみやび。
俺の方を見る。
「日下部って……頭悪いの?」
「何でそう思う?」
「もういい。じゃあ、明日ね。」
そう言うと足早に歩き始めたみやび。
「え?あ、ああ。おやすみ!」
「おやすみなさぁい。」
俺に背を向けたままで手をひらひらさせるみやび。