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月夜の歌姫

第75章 カミュの秘密


しばらくするとカミュも落ち着きを取り戻した。
静かにシルビアとサランに支えられながらも歩いていく。

「カミュさん、大丈夫です?頭が痛いとかは?」

心配そうに隣を歩くサランにカミュは申し訳なさそうな顔をした。

「ありがとうございます。なんとか平気です。」

「無理…しないでくださいね?」

サランの心遣いにカミュは静かにうなづいた。
教会に着くと神父は一同が来るのを待っていた。

「ようこそ来てくださいました。
カミュ、君も元気そうで何よりだ。
最後に見てから5年ぶりだろうか?」

神父の表情はとても優しいものだった。
カミュの表情は変わらず難しそうである。

「……5年前。
それまで俺はこの町に住んでいたんですか?」

神父は首を横に振った。

「かつてこのクレイモランの城下町は、北海で活動するバイキングの寄港地でね。
以前は交流も盛んに行われていたんだ。
当時の君はそのバイキングの手下だったんだ。」

全員が「え?」と言う表情を浮かべた。

「俺がバイキング?」

カミュ自身も信じられないと言わんばかりに呆けた息が漏れる。
グレイグが腕を組みかつて、カミュのことを調べていた話をしてくれた。

「盗賊カミュの出自はデルカダール王国がいくら調べても謎だった…。
まさかバイキングの生まれだったとは。」

神父はグレイグの言葉を訂正した。

「いえ、出生についてはなんとも…
カミュは幼い頃、妹と共にバイキングに拾われ育てられました。
それが幸せだったのかは分かりません。
彼らはかなり、過酷な生活を強いられていたようでしたし…。
実際、カミュの妹が亡くなったと知らせを受けてからカミュも姿を消してしまっていたので。」

カミュは神父から視線を逸らし静かに「やめろ…」と呟いた。


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