第71章 指輪
沈黙を破ったのはサランだった。
「マルティナさん。でも操られてたのはこの町の人たちを守ろうとしたからですよね?」
「え…?」
「サイデリアさんとかラァラちゃん達から聞いたんです。
町を取り返すために魔物に立ち向かいに行ったっきり戻ってこなくてと。」
「……私、マルティナさんを信じてます。
本当はやっぱりちょっと怖いですけど。
それでも、私はマルティナさんを信じたい…かな?」
サランが困ったように笑う。
それを見たマルティナは、ありがとうと涙を浮かべた。
「うむうむ、これで本当に一件落着じゃな。
ところでサランは動けるのかの?」
話を黙って聞いていたロウがほっとしたようににこやかに笑った。
「はい、ハンフリーさん達に挨拶したらすぐにでも。」
ブレインの呪文のおかげで痛みも消えたからかサランは動けるだろうと思いゆっくり立ち上がった。
「そうかい。それじゃあぼちぼち出発するとしようかの?」
「はい!」
みんなが教会の出入口へ向かう後ろでサランは少し立ち止まった。
自分の左手の指輪の真珠がきらりと光る。
「サラン?どうかしたの?」
シルビアが振り返った。
サランはニコリと笑って首を横に振った。
「なんでもないですよ!」
シルビアは不思議そうに首を傾げたがすぐに微笑みみんなの元へ二人で歩いた。