第65章 魂に呼ばれて
ジャコラから逃げ切りバンデルフォン地方の停泊所に船を停めて陸地へ上がる。
依然としてブレインは目を覚まさなかった。
「ねぇ、ほんとに大丈夫かしら?」
シルビアが心配そうに顔を覗き込む。
ブレインに息はあるものの目を覚ます気配がなかった。
しかしそれも長くはなかった。
しばらくするとブレインはうぅと唸ってか目を開けた。
「あぁ!良かった。ブレインちゃん目が覚めたのね!」
シルビアは安心したように胸を撫で下ろすと立ち上がった。すかさずサランが駆け寄ってくる。
「ブレインさん!怪我とかないですか?
もし必要なら薬草があるので!」
ガサガサとカバンから薬草を取り出そうとするとブレインが微笑み立ち上がる。
「ありがとう、大丈夫だよ。」
ブレインが海に落ちてから何があったのかはロウが説明してくれた。
説明を聞いたあとブレインはキョロキョロとあたりを見回す。不思議に思ったシルビアがブレインの様子を伺った。
「あら?どうかしたの?」
「さっきまで不思議な場所にいたんだ。
そこで姿をコロコロ変える預言者と名乗る人に出会ったんだよ。
あれは一体…?」
「んもう!ブレインちゃんたら?気を失っている時に夢でも見てたのね!」
シルビアがそんな冗談ぽく話したあとグレイグがため息をついた。
「きっと疲れているのだろう。
船員の宿舎を貸してもらえるそうだからそこで一晩休もう。」
みんなが頷き宿舎に向かおうとした。
ブレインだけが立ち止まり海を見つめる。
その隣にサランがやってきた。
「シルビアさんも、グレイグさんも心配だったんですよ。あぁは言ってますけどシルビアさんすごく不安そうでしたし、グレイグさんに至っては落ち着かなかったみたいで。」
優しく微笑むサランにブレインもうなづいた。
「それじゃあ行きましょう?」
サランが踵を返しグレイグとシルビアの後ろを追いかけた。