第64章 海の覇者
しばらく海を進んでいるとなんとなく、雲行きが怪しく感じられた。
風が強くなり波も大きくシルビア号を揺さぶる。
空からはぴしゃりと大きな雷鳴を立て稲妻が空を走った。
シルビアは慌ててアリスから舵を変わる。
舵が波に抗っているのかビクともしない。
「シルビアさん!手伝います!」
サランがシルビアの元へ駆け寄り一緒に舵を握った。
「おぉ、急に荒れてきおった…。」
ロウが海や空を見上げ心配そうに呟く。
それを見ていたグレイグが操舵席の方を見つめた。
「おい、ゴリアテ。貴様の船、これしきのことで沈んだりしないだろうな?」
シルビアはサランと協力してなんとかして船を真っ直ぐに進めるよう踏ん張っていた。
「今、荒波ちゃんと戦ってるんだから話しかけないで!」
シルビアがそう言った数秒後
突然、地響きのような感覚が船を揺らした。
ーーにおう…におうぞ
命のにおいだ
「なに…この声?」
「どこから聞こえるんだ?」
空から、海から響いてくるような声に一同はざわめく。
サランが不安そうな声を出す。
グレイグも辺りを見回した。
さらに船が大きく揺れ、ロウはバランスを崩し尻もちをついた。
不気味な笑い声が響き、海から大きな怪物が姿を現した。