第58章 笑顔を届けるために
そして大樹が落ちる日その、ユキを追いかけて1人にしたのは自分だとニコスに説明した。
「きっとホメロスと鉢合わせした時、あの子が足止めしてくれてたのよ。じゃなかったら…
一緒にアタシも行けば良かった…」
ギュッとシルビアは拳を握りしめた。それを見てニコスはそれ以上何も言わない。本当はシルビアが1番辛いことだって分かっている。騎士として1人の男として大切な人を守れなかった事実がシルビア本人を苦しめていることも。ニコスもシルビアが無事だったと聞いて喜びと安心感に満たされた。
「シルビアネェさん…この公演が終わったら、必ずサランを見つけて…」
シルビアはそっとニコスの肩に手を起き、ニコスと向き合った。
「えぇ…あの子は生きてるわ。必ず連れて帰るから 。」
シルビアの言葉に絶対だからとニコスは泣きそうな顔で笑顔を作った。団長はそのやり取りを見守ったあと最後の公演だから気を引き締めようとその場を収めた。