第4章 噂の王子様
いつだって、そういう話題が出るとどうしても恩人の優しい笑顔が浮かんでしまう。
「そんなこと言ってイジメないの、ニコスちゃん?」
洗濯物の裏からパッと出てきたシルビアにニコスがうわぁ!と驚き尻もちをついた。
「あら、ごめんごめん!大丈夫?
そこまで脅かすつもりはなかったのよ…」
ニコスが思ったより驚いてしまい、申し訳なさそうに肩を落とした。
「ところで何の話?」
よいしょとニコスの手を掴み立ち上がらせるとサランの顔を見る。
「いや、えっと…王子様の話です。
今度やる王子の誕生日レースのことです。」
「あぁ、ファーリス杯…だっけ?
なに?サランちゃんも気になるの?
あの王子様?」
「え…?」
好奇心に訊ねるシルビアにまた胸の奥がチクリと疼く。
「え、えぇと…。まぁ…なんとなく…
あ、あの洗濯汚しちゃったので洗い直してきます。」
フィッとシルビアから視線を逸らし洗濯物を持ってサーカスの建物の中に走っていった。
「どうしちゃったのかしら…?」
2人のやり取りを見てたニコスはくすくすおかしそうに笑った。