• テキストサイズ

月夜の歌姫

第3章 サーカスの歌姫


ーー深い闇があなたを包んでも絶望をしないで

サランの声が暗闇に響きわたる。
客もなんだなんだとざわめき始めた。


ーー私があなたを光へと導き進ませていく


「この声、いつも夜に聴こえてた声じゃない?」

女性の1人が隣の客に囁く。
ゆっくりとサランにスポットが当てられ、観客の視線はステージ真ん中で歌う天使のような少女に集中する。


ーーあなたが私を救ってくれたように私もあなたを救いたい

ーーあなたがいるから私は歌える

ーーあなたのために歌うからどうか忘れないでほしい

ーーあなたには希望があるのだと

サランの歌が終わると会場は静寂に包まれる。シーンと静まり返った会場にサランは今すぐにでも逃げ出したい気持ちになった。

(やっぱり私には、ニコスやシルビアさんみたいに笑顔に出来ない…)

そう思った瞬間、拍手が誰からともなく静かにゆっくり確かに響き始めた。

「感動した!」 「心が洗われた」 「美しい」

観客は小さな天使に気持ち溢れんばかりに拍手を送る。

「サラン、ほらおじぎして!」

舞台袖から観客には聞こえないくらいの小さな声でニコスがサランに声をかける。
サランはニコスに言われハッとしたのかワンピースの裾を持ち優雅にお辞儀をしてから舞台袖へと歩いていった。

こうして、サランという天使の歌声を持つ小さな歌姫の初舞台が終わった。
/ 618ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp