第3章 サーカスの歌姫
シルビアに歌声を買われ、恐る恐る団長の前で歌を披露する。
サランが歌っている時はシルビアも団長も真剣な顔をしてサランを見届けていた。
歌を歌い終えふぅっと息を吐く。
「ほぉ、これは見事な声だな。
まるで女神様に仕える天使の歌声みたいだ…!」
「でしょ〜?こんなに素敵なんだから
隠しておくなんてもったいないわよ!」
団長の言葉にシルビアは嬉しそうだった。
サランもこんなに褒められるとは思っていなかったのか、少し照れている。
「で〜サランはその歌声をお客さんに披露したいと思うのかい?サランもステージ袖から見てたと思うが観客はまぁまぁ入る。その中で歌声を披露出来るかい?」
団長の目は真剣そのものだった。
そんな団長の言葉にサランは言葉に詰まる。
「私は…みんなに聞いてもらいたいけど…
私の声とか歌う歌ってシルビアさんやニコスみたいに人を明るく笑顔に出来るか分からないんです…」
ようやく言葉に出来た思いを聞いたシルビアは優しく笑いサランの肩に手を置いた。
「そんなことなら大丈夫よ!
あなたの歌は誰よりも優しく温かいわ。」
肩に置かれた手に少しばかり力が入る。
「あとは…笑顔ね!素敵な歌には素敵な笑顔が大切よ!ほら笑って!」
シルビアは肩から手を離しサランのほっぺをつまむとクイッと上に引っ張った。
「ひるひあはん、いひゃいてす(シルビアさん痛いです)」
「笑顔…取り戻せるといいわね。」
シルビアは頬から手を離し頭を撫でた。
少し大きく温かい手がサランを安心させる。
(シルビアさんのために歌いたいな…)
そんな言葉は喉につっかえ音にならずサランの胸の中の引き出しに仕舞われた。