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月夜の歌姫

第28章 海の暴れん坊


海に出て西に進むと村の男たちの船が見ててくる。
男たちはシルビアの船に気づくと大きく手を振り、大声をあげる。

「なにか、叫んでますね。読唇してみます?」

サランがうーんと難しい顔をする。

「すみません!キナイって方を探してるのですがいらっしゃいますか?」

セーニャが大声を上げるが距離のせいか届いてなさそうだった。

「ダメね…ここからじゃあ声が届かないわ…
みんな、何を言ってるのかしら?う…ず…ら?
うずら?」

「シルビアさん!上から!!」

サランが男たちの言いたいことが分かった途端叫んだ。
上を向いた瞬間大きな船が落ちてくる。

落ちてきた船の衝撃で海が揺れシルビア号も揺らされた。
体勢を崩し、尻もちをついてしまう。
カミュもまたよろめき、船体の壁にぶつかった。
海が盛り上がり波が揺れ、海の暴れん坊がその大きな姿を現した。

「これが…クラーゴン…」

サランはクラーゴンの大きさに言葉を失う。

「サランちゃん!しっかり!ダーハルーネを出る時にも見たでしょ?
大丈夫よ!あたし達なら勝てるから!」

シルビアが肩を優しく、しっかりと掴んだ。

「はい…!」

「おい!来るぞ!」

クラーゴンが身を乗り出し船の先端に体をかけた。
ぐらりと船が大きく揺れる。

「きゃあ…!」

「危ない!!」

セーニャがバランスを崩し海へと投げ出されかける。
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