第27章 旅路に潜む影
静かにスヤスヤと眠っているサラン。
それにしても起きる気配がないことにアリスも不思議と思い始めていた。
「人間、一日中1度も起きないなんて聞いたことがねぇけどなんかあるんでがすか?」
かれこれ半日以上は眠りについている。
そろそろ起きてもいいとは思うがサランが目を覚ますことは今のところ見られなかった。
サランの意識は深い闇にあった。
手を伸ばしたら自分の手が見えなくなるほど深い闇。
闇に包まれているのにどこか落ち着く。
不思議な感覚に辺りを見回している。
ーーーこの感じ…なんだか落ち着く…。
温かくて、ずっとこのままがいい。
深く、まるで温かい布団の中にいるような心地良さにサランの意識は微睡む。
サラン…?
誰かに声をかけられた。
しばらく忘れていたその声。
それはしばらくすると直ぐに思い出した。
「お母さん…?」
辺りを見回しても声の持ち主が見当たらない。
「お母さん?どこ?」
サランの体は子どもの頃の姿に戻り当時の服を着ている。
体が軽くなり、走りだす。
しばらく走っているとぼうっと光る人影が見えてきた。
それは確かに覚えている母親の出で立ちでサランはそれに近づきたいと足をとめなかった。
「お母さん!」
飛び込み抱きついた時、カチャッと鉄の擦れる音が耳の中を通り過ぎる。
「え…?」
硬い感触に顔を強ばらせ見上げると、そこには見たことあるようなないような男が立っていた。