第26章 二人の想い
そんなの自分のエゴだって分かっている。
彼女のことだからきっと、自分一人の犠牲で世界が救われるならとか言い出すだろう。
それを尊重してあげられない。
他に世界を救う方法は必ずあるはずだから…と。
シルビアはそんな彼女をただ愛おしそうに見つめた。
「ねぇさん、ほんとにサランさんのことすきでがすな。」
にこやかな野太い声が響く。
やっぱりアリスには分かっているようだった。
「えぇ。こんなに愛おしいなんて思うのはあの子だけよ。
だから、アリスちゃん。アタシに何かあったらあの子を…サランをお願いね。」
シルビアは優しく微笑んだ。
「それは、ねえさんの頼みとはいえ受け付けられねぇ頼みですな。
シルビアねぇさんの代わりはいないから、シルビアねぇさんが頑張って生きてルナリアさんを守るべきだとあっしは思いますぜ。」
ガハハと笑うアリスの言葉にシルビアはそうね、と真面目な顔をした。
船はゆっくりと確実に夜の海を進んでいく。
やがて、月が沈み太陽が上り始め海は明るくなっていった。