第16章 アラクラトロと軟弱な優しい人
ラァラは不安に押し潰されそうになりながら涙を堪え、サランたちの方を向いた。
「ハンフリーお兄ちゃん死んじゃうの?」
ラァラの言葉にアラクラトロが不気味に笑う。
「これ以上は使い物にならんか、しょせんは軟弱な人間よ」
「軟弱…?」
その言葉がサランの怒りに触れた。
静かだがものすごい熱量で怒っているのが誰から見ても分かった。
「ちょ、ちょっとサランちゃん?」
シルビアの困惑の声も届かなかいのか、ゆっくりと1歩1歩前へ進む。
「ハンフリーさんは、軟弱なんかじゃない…
子どもたちの居場所を守るために1人で必死に戦ってきた強い闘士です。
そりゃあ守り方はあなたなんかに頼って間違えてしまったかもしれない。
それでも、魔に手を染めても守りたいものがあった優しい人なんです…」
孤児院で見た子どもたちの笑顔がサランの脳裏を過ぎる。