第1章 理想のペアと自動販売機
「いいや、これくらい、いくらでもねえよ」
微笑し、返事をした丸井です。
「あなたねぇ、自動販売機の飲み物の料金は、スーパーで売っている飲み物より高いってご存知ないのですか……」
「知ってるよ。けど、数十円しか変わらないだろい」
「その数十円がもったいないのですよ。いくら損してるのか計算したらわかるでしょう……」
「うーん、オレ、計算とか苦手だから。というか、キテレツってお金の使い方、案外ケチな方?」
「……欲しいものがあるときに出すときは出しますが、あとは出さないように財布の紐を固くしめますよ。あなたの場合、少しはケチりなさいよぉ」
「オレは金遣い荒くねえ……」
理想のペアがそうやりとりしているとき、高校生3人がやってきました。彼らも自動販売機の飲み物を買いに来たようです。
高校生3人が来たことに気付いた丸井と木手はすぐその場を離れ、外に一旦出て話の続きをしようとしていました。
けれども、中の自動販売機で飲み物を買っていた高校生3人の会話が理想のペアの耳に入ってきます。
高校生①「なあ、知ってるか?」
高校生②「知ってるよ。自販機の電照板に写ってる人物くらい。Uー17高校生代表の芸能人と、中学生代表は跡部財閥のご子息様だろう」