第1章 理想のペアと自動販売機
丸井はもう1個飲み物を買うことが出来る当たりを引き当てます。
「おや、ツいてますね、アナタ」
冷静な表情を装っている木手ですが、当たりを引いた丸井を見て羨ましそうにしています。
「たまにはこういうラッキーなときもないとな」
丸井はシクヨロのピースサインをし、初めに買おうとしていた炭酸飲料を選ぶと見せかけ、その上の段の清涼飲料水を選びました。
「あなた……」
木手はぽかんとなります。丸井が本当に飲みたかった飲み物が中くらいの段の炭酸飲料と分かっていたからです。それなのに、ちがう上の段の清涼飲料水を選んだことに驚きを隠せずにいました。
「ほら、これ好きだろう。持ってけよぃ。じゃあな」
自動販売機で木手の好みの飲み物を覚えていた丸井は本人に清涼飲料水を渡し、泊まり部屋に戻ろうとします。
そのとき、木手は縮地法で移動し、丸井の前に来ました。丸井は目をぱちくりさせます。
「このまま、格好つけさせませんよぉ、丸井くん」
木手は片手を腰にやり、テニスラケットを突きつけました。
「打ってくか」
丸井もテニスラケットを持ち、木手とコートへ再び向かいます。