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【ヒロアカ】泡沫少女の歌声はどこまでも

第8章 恋を知らないマーメイド


−轟side−


(海波、プールにいるのか?)

この気温でプールに入っているとは思えないし
なんでプールなのかよく分からないが
海波は教室にも廊下にも居ないので
とりあえず緑谷の言っていた
プールに向かうことにした。

(たしか…こっちか)

そっとプールサイドのドアを開けると
普通のプールの景色が目に映った。

とくにだれか泳いでいるわけでもなく
プールサイドにいるわけでもない。


やっぱりこんな時期に
プールに居るわけねぇか

海波の姿がなかったので
諦めて帰ろうと目線を少し下にずらした時、
制服と荷物が置いてあるのが見えた。


女子の制服、
そして、海波の使っている鞄。



(荷物だけここにある…?)



何故荷物があるのに
本人はここにいないのだろうか

こんなところに制服を置いたままで
今どこで何をしてるんだ

思考を巡らせたがやはり何も分からない。
頭の中がはてなマークで
埋まりそうだったその時、《バシャ》と
水が跳ねる音がした。

誰も泳いでいないプールから水飛沫…。

小さな水飛沫が聞こえた3秒後

《ザパッ!!》と大きな音が
プールサイドに鳴り響くと同時に、


「何だ?!あれ…?」


水中から1人の女の子が空中に飛び出して来た



いや、ただの女の子ではなく、あれは…






「人…魚…?!!」






飛び出してきた女の子は
どうみても海波なのだが、

上半身はヒーローコスチューム、
下半身が魚のヒレのようになっていて、
これは多分…人魚というやつだ。

動物に関わる個性を持っている人は
姿もその動物に影響されていることは多い。

だけどこれは…初めて見た

水飛沫とともに飛び出してきた彼女を見た時、
この世のものじゃないんじゃないかと思った。

あんなに美しい生き物が存在するのか。
彼女が空中にいたのはたった数秒。
その間に目が合った。

透き通る海みたいな目と、
太陽に反射しきらきらと輝く
海波の長い髪の毛と鱗、

まるで時間が止まったみたいに
一枚の写真を見ているようだった。



『えっ?!轟く…わっ!!?』

俺がここにいることに気づいた
海波は《ザッパーン!》と
今までで一番大きな音を立てながら
そのままプールに落下していった。

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