第6章 ヒーローを目指すと決めたから
−あくあside−
『大丈夫?!出久くん!!!』
思い切って爆豪くんの前に飛び出して
個性を発動させた。
私の右手から発生させた水流は
大きな渦を巻いて爆豪くんに直撃、
そのまま突き当たりの壁まで
勢いで押しやった。
ひとまず爆豪くんの攻撃を止めた私は
出久くんの側に駆け寄る。
「あくあちゃん…!?」
『ごめん、遅くなった!…で、これからどうする…?』
もう残り時間も少ない
敵チームを捕まえるよりも
核兵器を回収しに行く方が賢明だろう
でも、ここから真上に行くには
爆豪くんの前を横切って
行かなければならない。
だからといって私達が今から
普通に上の階に向かったところで
間に合うとも思えないし、
飯田くんに既に見つかってしまっている
お茶子ちゃん一人で
核兵器の回収するのも難しい。
「この方法は使いたくなかったけど…、ある…勝つ方法が」
「おい、今の…って、あいつどこ行った」
爆豪くんが体制を整えて
こちらに向かってくる前に
私は曲がり角の向こう、
爆豪くんからの死角に隠れていた。
出久くんが言っていた作戦が上手くいけば
勝利の可能性はまだある。
「それよりてめぇ何で個性使わねぇんだ。俺を舐めてんのか!?…ガキの頃からずっと!!そうやって!!!」
「違うよ」
「俺を舐めてたんかてめェはぁ!!!」
ここから爆豪くんの姿は見えないけど、
この話し声を聞くだけで
相当感情がたかぶっているのがわかる
「君がすごい人だから勝ちたいんじゃないか!勝って、超えたいんじゃないかバカヤロー!!!!」
「その面やめろやクソナード!!!」
(出久くんのあんな顔、初めて見た…)
先程まで爆豪くんの方が勝っていたのに
今は出久くんより爆豪くんの方が
余裕がないように見える。
2人が何を抱えているのか、
今までどうやって過ごしてきたのかは
私にはわからない。
けどこれは…この戦いは、
2人にとって、
出久くんにとって必要な事なんだろう。
「2人とも行くぞ!!!!」
「はい!!!」
『おっけい!!』