第25章 ホントは分かっていたとしても
−あくあside−
勝己くんはあの後
そのまま会場内へ戻って行った
それでも
私をまっすぐ見た真剣な勝己くんの
表情が頭から離れない。
「“付き合うって…何に?”って…あくあ、そこまで鈍感じゃないよねぇ?」
『ッ寧人…?!』
近くに誰もいないと思っていた場所で
後ろから声がしたためバッと振り向くと
そこには寧人が立っていた。
「やっぱりまだ気にしてるんだ?」
『………別に』
図星をつかれたみたいで
一瞬動揺しそうになった
いや、図星だったのは本当だ
私が、大切を作らない理由
私が、鈍感なフリをした理由。
寧人は全部知っているから
隠しても意味なんてないのに
私は小さな意地を張る
「…ま、簡単にホイホイ男について行くような人より100倍マシだけど」
『あのねぇ……』
「それより昼食、まだなんだろ?誰かと約束してるとかじゃないなら一緒にどう?」
昼食…
そうやって話題を逸らしてくれたのは
寧人なりの気遣いだったのかもしれない
『…うん、一緒に食べよ!』
その言葉に私は
いつも通りの笑顔で返事をした