第13章 あなたは…誰…?
−あくあside−
「落ち着け、もう大丈夫だ」
勝己くんに抱きしめられてから、
少し心が落ち着いてきた。
甘いニトロのような香りと
安心感に包まれて、
勝己くんは助けに来てくれたんだと実感する
『……ありがとう。もうだいぶ落ち着いてきた』
ひとまず混乱した頭の中を整理する。
結局零というあの男は何者だったのか、
私に何の用があったのか、
なんで名前を知られていたのか、
分からないことが沢山ある
でもそれを今考えたところで答えは出ない
今すべきことはまず、
元いた場所に戻ること。
『勝己くん、私はもう大丈夫だから、行っていいよ!』
「行っていいよってお前…ほんとに大丈夫なんか」
『大丈夫!…どうせあの霧のワープゲートみたいなのぶっ潰そうとか考えてるんでしょ?…私は敵に個性を見せられないから一緒には行けないし、私のせいで足止めして欲しくないの』
正直私は今めちゃくちゃ不安だ
勝己くんが来てくれなかったら
どうなっていたか分からない
何故か個性を使うことができなかったし
本音を言えば単独行動は一番避けたい
でもきっと彼は
ヴィランに立ち向かって行くだろう。
勝己くんが加勢することで
状況が少しマシになるかもしれない、
それを私のせいでここで足止めしたくない
「全部お見通しってか。……わーった。絶対無事で戻れよ。あくあ」
『うん。勝己くんも、無事で戻ってきてね』
そう言葉を交わした後、
勝己くんは両手から爆破をさせながら
空を走るようにすぐに
遠くのヴィラン達がいる方向へ向かった
私の予想は当たっていたみたいで、
やっぱり彼はヴィランを倒そうとしている
さっきヴィランに簡単に
捕まってしまった私がまた一人で
行動することに不満そうだったけど、
きっと彼は私の事を
信じてくれたのだろう。