第7章 【第五講 前半】文化祭は何かとトラブルになるけどそれも又青春
「□□! 俺の服も買って来てくれ!」
近藤は未だ自分の背中を見ようと必死になりながら、○○にお遣いを依頼する。
「嫌です。ジャージにでも着替えればいいんじゃないですか」
「随分扱いが違うな!」
「そりゃ、そうですよ」
先程、○○が講堂に出向いたのは、フリーマーケットが開かれているためだった。
赤インクをつけられた女子生徒の着替えを用意するため。
○○からシャツを受け取った女子生徒とその彼氏は、礼を言って再び文化祭巡りへと戻って行った。
女子生徒も学校にジャージはあっただろうが、そんな格好では文化祭を楽しめるべくもない。
「それに着替える必要ないですよ。その模様ならファッションに見えます。前衛的アートです」
○○は感情のこもらない声で感想を述べる。
「今日は文化祭ですし、制服を崩しても校則違反にはなりませんよ」
「え、本当に? 本当にそう思う?」
「ええ。バカとか書かれてるわけじゃないんですから、誰も描かれたものだとは気づかないんじゃないですか。個性的で素敵ですヨ」
「そ、そう?」
嘘に決まっているだろうという○○の表情にも気づかずに、近藤は照れた笑みを浮かべている。
「俺があの背中にバカって書きてーな」
土方は溜め息を一つ吐くと、バカは放って見廻りへと向かった。