第6章 【第四講 後半】マヨネーズは万能食だけど恋の病には効きません
手始めに掛け声の練習から、という銀八の提案で、野球の練習そっちのけで無駄な時間を浪費する。
「まずはチア部の掛け声からだ」
もっとどうでもいいわ! との新八のツッコミも無視し、銀八は○○の前に歩み出る。
「チア部ではないんですけど。仮にチア部だとしても、部員一人なんですけど」
そもそも、本物のチア部にお願いすれば練習試合に来てくれないこともないのではないか。
○○がチア部員として参加することもあるまい。○○の言葉など聞き流し、銀八は話を進める。
「チア部の掛け声はもう決まってんだ」
――L・O・V・E! ギ・ン・パ・チ!
「いや、間違ってます。先生に声援送ってどーすんスか」
目を細める新八の横で、近藤は頷いている。
「打者の名前に変更するということだろう」
近藤が打席に立ったときは「L・O・V・E! コ・ン・ド・ウ!」、新八ならば「L・O・V・E! シ・ン・パ・チ!」
野球でLOVEも意味不明だが、士気が上がらないこともない。
「そういうことっスよね? 先生」
「いや、ギンパチは固定だ」
いつでもどこでも一回表から九回裏まで、LOVEギンパチ。
「なんでだよ!」
「俺等の応援してくれよ!」
ずっと監督代行の名前ばかり連呼されれば、士気が上がるどころかやる気がそがれる。
「しゃーねェな。じゃあ、お前らのも考えてやんよ」
――ME・GA・NE! シ・ン・パ・チ!
――GO・RI・RA! コ・ン・ド・ウ!
「何の応援だ、それ!」
「純然たる事実を述べてるだけじゃねーか!」
「純然たる事実? ゴリラなの? 近藤さん」
声を上げる新八と近藤の横で、○○はポンポンをシャカシャカと振る。
「じゃあ、土方さんはこれで決まりですね」
――S・H・I・N・E! ヒ・ジ・カ・タ!
「そりゃシャインか? 輝け、土方って意味だよな?」
「シネに決まってまさァ」
「てめーがSHI・NE!!」
土方と沖田の追いかけっこも始まり、もはや野球の練習など遥か彼方へと葬られる。