第5章 【第四講 前半】野球の話は後半から。
真っ直ぐに向けられるエリザベスの瞳。
見つめていると、異空間に吸い込まれるような感覚を覚える。
遠のきかける意識。○○は頭を振る。戻って来い、自分。
○○は大きく息を吸い、心を整えた後、桂に人差し指を向けた。
「ペット同伴の登校、禁止!!」
風紀委員として、ビシッと指導せねばならない。
「あくまで□□さんに紹介しようと思ったまでだ。エリザベス、わざわざすまなかったな」
先に帰ってくれと、桂はエリザベスに告げる。
○○は吐息をついた。
「紹介なら学校じゃなくて他の場所ででも……いや待て、それだと学校外で桂くんと会わないといけなくなるのか……」
視線を地面へと伏せていた○○は、肩を叩かれ顔を上げた。
○○の肩を叩いたのはエリザベスだった。彼は『またな、○○ちゃん』と書かれたボードを掲げていた。
その文字を見て、桂の表情が豹変した。
「エエエリザベス! □□さんに対してなんと馴れ馴れしい……!」
自分ですら“□□さん”止まりだというのに。
エリザベスは短い手を振りながら去って行った。
釣られるように、○○も手を振ってエリザベスを見送る。
二人の様を見て、桂の中にモヤモヤとした感情が芽生える。
両者を引き合わせたのは自分だというのに、何とも言えない疎外感。
「ン、ンンン」
桂はわざと咳払いをし、○○の視線を向けさせる。