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~セーラー服と銀八先生~ 銀魂3Z沿い小説

第1章 【第一講】人が恋に落ちる理由なんて意外と単純


「みんな知ってるはずなのに~」

 □□○○はアイドル・寺門通の歌を口ずさみながら、教室に向かって歩いていた。
 昼食を終えたあと、神楽からのバレーボールの誘いを断って、○○は図書室に行っていた。

「出るとこ出ると口つぐむ~」

 手に持たれるのは二冊の時代小説。
 幕末を題材にした有名な著者の作品だ。
 何の作用か、○○はどうやら「サムライ」に興味を持っているようだ。
 その小説の舞台は京都。主人公は……取り立てて言う事柄でもないので秘しておこう。



 桂小太郎は腕を組みながら廊下を歩いていた。

「今日はシナモンが利きすぎだろう。その上、ターメリックは足りめっく。ん? いや、足りない。というか、俺としてはシナモンは入れず、コリアンダーのみで風味をつけたいところだー……」

 と、先程、学食で食べたカレーに対する批判を四の五の呟きながら。

「ん? あれは!」

「チョメチョメ~」との歌声を聞きつけ、桂は視線を前方へと向けた。
 クラスメイトの□□○○が対角方向から歩いて来るのを発見。
 ○○は3Zの教室、後方の扉へと差しかかろうとしている。
 それは桂の片恋相手。といえば聞こえがいいが、こちらも若干ストーカー気味。
 右手を大げさに振りながら、桂は駆ける。

「○○殿ォ!」

 桂は○○の姿だけを視界に捉えながら走った。足元に注意することなく走った。そのため、ブービートラップに引っかかった。
 未だ3Z教室内で伸びている、そのくせ誰にも気にかけられていない哀れな近藤という男が放った、バナナの皮という名の至極単純な仕掛けに。
『ゴミはゴミ箱へ。』などと掃除の時間でもないのに拾って捨てる奇特な生徒はいない。皆が皆、皮を避けて廊下を往来していた。
 無論、気づかずにバナナの皮ですってんころりんと滑った奇特な輩もいなかった。ただの一人も。
 今この時を以て、ただ一人の無様な輩が誕生した。

「あああァァァ~!!」

 と、間の抜けた声を上げて桂は前のめりにずっこけた。こけ続けた。いや、転がり続けて止まらない。
 それはそれは、綺麗なフォームの連続前転であったトサ。
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