第4章 【第三講 後半】そして棒倒し……
突然マイクを通して聞こえた○○の声に、一番狼狽えたのは、土方だった。その一瞬をつき、先端で待機する敵の要に蹴落とされた。
「あぶねッ!!」
その高さ五メートル。
真っ逆さまに落ちれば、負傷して戦いからの離脱をも余儀なくされるかもしれない。
寸でのところで、土方は地面との衝突を免れた。
「なァにやってんですかィ、土方さん!!」
遠くから聞こえた声。
見てみれば、人をバカにしたような目で沖田が自陣から見ていた。
「今の今まで、土方さんが○○にナニされる権利に一番近いところにいたんですよ! それをむざむざと! ○○が知らねー男にナニしてもいいんですかィ!?」
沖田はニヤリと土方に笑いかける。
「バッカ! オメェ、あんなもん、意味もわからず誰かに言わされたに決まってんだろ! 誰が倒してもあんなもん無効だ!」
成績優秀で、知らないことなど何もないような○○だが、どこか天然。
そんな○○の性格を土方は短い付き合いの中でも理解している。
「言わされたもんでも、一度口にしたことは責任とって、○○はやりますぜ!」
沖田の言葉に、土方は歯を食い縛る。確かに、○○ならばやりかねない。
土方をからかっている間に、沖田のドS魂に火が灯され始めた。
「おもしろそうなんで、ちょっくら行って来やーす」
「え!? 総悟!?」
棒の先端に乗っている近藤に言い残し、沖田は守備を放棄して赤組の棒へと突っ走った。
「○○の純潔は俺がドス黒く染めてやりまさァ」
「テメェ!」
さすがは斬り込み隊長、沖田総悟。
土方を置き去りにし、シャカシャカと棒をよじ登る。
「ふざけんな! テメェに○○は渡さねーぞ!!」
大勢の男子生徒の中で自分が公然告白していることにも気づかず、土方は沖田に負けじとよじ登る。